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マンション大規模修繕の工事監理について

 工事監理者については、建築基準法により「一定規模以上の建築物の工事はそれぞれ該当する建築士である工事監理者を定めなければならない」とし、建築士法では、その業務について「工事が設計図書とおりに施工されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない」とされています。

 耐震偽装などのトラブルを受けて、平成19年6月に施行された改正建築基準法では、実体規定に大きな変更は無く、手続き面の変更であるにもかかわらず、建築確認申請が大幅に遅れ、建設業界に多大の影響が出ています。これは、設計者へ説明できる資料の添付をすべて求めるなど、責任所在を明らかにするもので、工事監理者についても同じです。マンションについても建築基準法による大規模な修繕とか模様替、増築などの場合は、建築確認申請が必要であり、業務独占者である建築士による工事監理者も定められ、その責任も重くなってきています。

 しかし、一般的なマンションの大規模修繕工事については、ほとんど建築基準法によるものに該当していません。そのため、改修設計にしても工事監理にしても建築士法等に縛られない人たちにより行われていたり、
建築設計事務所等が、新築物件の減少により、新規分野への進出と称して、安易にマンション改修設計、監理へ向かい、改修工事のノウハウも無いまま施工現場へ乗り込み、施工者へ指示を与え、発注者と施工者の意見対立の仲裁もままならない状態であるのが現実ではないでしょうか。

 
マンションの大規模修繕工事は、通常人が住みながら行う居抜き工事が特徴で、居住者対策を怠ると即トラブル発生となります。そのため、施工者の現場代理人(監督)はその対策に忙殺されて、なかなか本来の品質管理ができないばかりか、施工完了確認も出来ていないことが多々あります。そこで、マンション管理組合では、監理者を立てて大規模修繕工事の品質管理等をさせようとしているのでしょうが、監理者への期待が大きかったり、当然発注者の味方であると思い、請負者への無理難題を押し付けようとしていることも見受けられます。

 
監理者はあくまで、中立の立場で、改修工事を適正に完成させるためにその業務を行うべきであると思います。そこで、改修工事に携わる監理者の参考書である「建築改修工事監理指針(財団法人建築保全センター発行、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)」に従って、最近主流となっているマンション大規模修繕工事の設計監理方式による、工事監理者の行うべき業務概要を下記に示します。尚、この「建築改修工事監理指針」は国の建物を対象として書かれているため、マンションなど民間改修工事では当てはまらないところもありますから、一部修正、加筆しています。

1.工事監理者の立場
 工事監理は、契約図書に基づいて良好な施工品質を確保するために行うものです。
 請負者とは、発注者と請負契約を結んだ相手方のことであり、請負工事は、請負者が契約したとおりの工事を完成させるために、請負者及び発注者が対等の立場における合意に基づいて契約されています。

 契約図書の一部である工事請負契約書には、請負者に対する監理者の権限、職務等について定められています。工事中請負者が適正とするものでも、監理者が適正と判断できない場合があります。その場合、両者の協議が必要ですが、判断の基準はすべて契約図書です。

 なお、契約は双方が対等であることを認める双務契約であるが、安易な妥協や譲歩があってはなりません。しかし、双務契約である以上、
契約の内容に盛り込まれていないことを強制してはならないし、感情的な対立も避けなければなりません。監理者は、常に良識を持って厳正に問題解決を図るようにしなければなりません。

 改修工事は多くの専門業者による共同作業と居住者等の協力で進められて行くものであり、人の和を重んじ、請負者、専門業者、監理者など関係者が意思疎通を図り、相互の信頼関係によって行われることが望まれます。

 
監理者は、契約図書に従って工事を完成させるだけでなく、技術者としての自覚を持ち地球環境、防災、安全、労働環境、品質管理、新技術導入、生産性向上、コスト、規制緩和、健康安全環境などの課題に請負者とともに誠意をもって解決を図る努力が求められます。

2.用語の解説
  1)確 認:工事を設計図書と照合し、それが設計図書の通り実施されているかいないかを
        確かめ、請負者に対して認めることをいう。

  2)調 整:設計図書に基づいて、工事の目的物が具体化されていく段階で生じる種々の問
        題を、関連設備工事等との取合いも含めて適切に処理し、工事の流れを円滑に
        保つことをいう。

  3)記 録:工事における監督の経緯を明らかにしたものをいう。

3.監理者の業務の概要
 監理者の業務は、設計図書の具現化の段階における確認、調整及びその記録です。発注者の代理人である監理者は、自己の権限を越えるものについては、自己の上司、発注者の指示を仰ぐことが必要です。

 請負者の自主的施工範囲の取扱は、請負契約書によって請負者が自主的に施工できる範囲については、原則として、請負者の責任において実施するものです。しかし、請負者の施工計画によっては、契約条件通りの工事目的が達成されないと判断させれる場合、あるいは社会的・技術的常識に反すると判断される場合は、監理者はその理由を示して注意を請負者へ与える必要があります。事態が重要な場合及び注意が受入れられない場合は、時期を失することなく、発注者へ文書で申し入れを行う必要があります。

 下請負人の選定は、請負者に任せられた事項ですが、下請負人の名称その他の通知を求めてその下請負人が不適当と認めるときは、請負者へ改善を求めなければなりません。これは、下請負人の良否が出来ばえに大きく影響を与えるからです。

 
監理者は、問題解決に当って迅速、かつ、適正な決定を行うよう努力しなければなりません。

4.確認業務
 1)確認業務に対する心構え
   契約書に基づく出来高の確認や設計図書に基づく品質の確認は、監理者の基本的業務で
   す。しかし、仕様書等に規定されているすべての事項を確認すると、現場での作業が膨
   大となり、巡回監理ですべての確認ができないので、工程の重要度を勘案して限られた
   時間・体制で効率よく、要点を見逃さないで監理できるよう工夫しなければなりません。
   つまり、施工の目的を熟知することにより確認すべき事項が把握でき施工の重要度を比較
   することにより、検査・立会い等の軽重が決定できるということです。

  
2)確認業務の分類
   確認業務を分類すると3項目となり、それぞれ準備段階と施工段階とに分かれます。
   @ 材料と施工が設計図書どおりか
   A 工期内の完成を確認
   B 請負者の責任に属する範囲の施工内容について承知している

  3)準備段階
   巡回監理による確認を行う前提としては、請負者による自主的管理が適切に行われている
   ことが必要となります。このため、施工計画書による請負者の施工体制の確認が必要で
   す。準備段階とは施工に先立ち工程表、施工計画書、施工図、見本等により、設計図書の
   内容を具体化する段階です。また、これらを通して施工時期、材料、工法等を監理者と請
   負者とがお互いに確認し、その通りに施工することを約束する段階でもあります。施工品
   質はこの処理いかんで決定するといっても過言ではありません。

   この段階で請負者に提出させる施工計画書等は、契約図書である仕様書等に基づいた実質
   のあるものとし、監理者は、その内容が契約図書と食違わないか、発注者の要求品質を満
   たしているか、現実可能なものとなっているか、将来不具合や故障が発生しない納まりに
   なっているかなどの観点で審査します。

  
4)施工段階
   施工段階は、準備段階で確認し、約束した事項の実施ですから、原則として、請負者の責
   任で管理が行われることになります。また、材料及び施工の確認(受入れ検査)も原則と
   して請負者の自己責任で行われます。監理者としては、請負者の自主的管理が適切である
   かどうかを、請負者の自主管理(自主検査)帳票類を確認することです。

5.調整業務
 
現場における調整業務は工事請負契約書及び仕様書に定められています。主な調整業務は以下
 の通りです。

 
1)設計図書に明記のない場合又は現場の納まりで設計図書によることが出来ない場合
   現場で発生するほとんどが疑義に対する調整であり、請負者の単なる思い違いから設計時
   には予想付かなかった事項まであり、思い違いは別として、設計変更が生じる場合は、契
   約変更と後に行うか、文書により変更内容を通知しておき、後でまとめて契約変更を行う
   場合があります。また、設計変更に至らない軽微な変更については、主として、監理者の
   権限の範囲内で判断して行うこととなるが、発注者への報告や記録の提出を行うことが必
   要です。

 
2)災害又は公害発生の恐れがあるとして協議してきた場合
   請負者よりの協議又は報告があった場合は、速やかに発注者へ報告し、協議を行った後、
   請負者へ指示を行う。

 
3)災害又は公害が発生した場合
   事故発生時は、現場代理人から監理者へ直ちに通報することを求め、発注者その他関係者
   への連絡、現場保存、記録及び情報の収集に努める。

 
4)不合格施工が発見された場合
   不合格施工が発見された場合に、容易に修正できる場合は再施工、手直しを命じればよ
   い。しかし、材料、施工等で大量な不合格が発生し、再施工、手直しでは対応できない
   場合は、その処置方法について発注者へ報告し、協議を行った後、請負者へ指示を行う。

 
5)契約図書により監理者が適切に調整されている場合
   監理者が調整に努めても請負者が非協力的であるとか、監理者の権限に基づく指示を受け
   容れない場合は、その処置方法について発注者へ報告し、協議を行った後、請負者へ指示
   を行う。

6.監理者の記録
 
1)工事の全般的な経過を記載した文書
   巡回監理により確認、調整を行った日時、内容等を「監理報告書」により記録する。

 
2)監理者の指示した事項及び監理者と協議した事項
   監理者が請負者に行う指示及び請負者から監理者へ承諾を求められた場合は、日時、内容
   等を「施工指示書」により書面を持って指示及び了解を与え、それを記録する。

 
3)材料及び施工に関する報告及び検査並びに立会いの記録
   請負者から承諾を求められる材料及び施工に関する報告に対しては、日時、内容等を
   「施工指示書」により書面を持って指示及び了解を与え、それを記録する。
   請負者から求められる材料及び施工に関する検査及びその立会いに対しては、日時、内容
   等を「施工指示書」により書面を持って指示及び了解を与え、それを記録する。