株式会社ビルディー マンション大規模修繕工事コンサルタント  

長期修繕計画についての考察(長期修繕計画作成)
修繕計画の必要性
役立つ修繕計画とは
キーポイント
自社開発特許取得修繕計画装置
書誌
要約
請求の範囲
利用分野 従来の技術
効果
課題
手段
作用
実施例
図の説明
自社開発修繕計画作成装置の概要説明
長期修繕計画の利用方法
修繕金改訂案提案書の利用方法
概算修繕費用の算出
大規模修繕工事は長期修繕計画の見直しの機会
特殊建築物定期報告書の作成




株式会社ビルディー

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【実施例】
 図1は、本発明の一実施例である修繕計画作成装置1の動作を簡単に示すフローチャートである。
 また図2は、修繕計画作成装置1の構成を示すブロック図である。修繕計画作成装置1は、制御手段2、入力手段3、記憶手段4、表示手段5、印画出力手段6を含んで構成される。制御手段2は、たとえばCPU(中央演算処理装置)で実現され、入力手段3から入力される劣化診断データ、修繕数量データおよび年度指定データに基づいて、修繕仕様書、修繕日程計画書、修繕費用計画書、見積書、および工事仕様書を作成する。入力手段3は、たとえば所定の用紙に記入された文字を光学的に読取る読取手段を備える入力装置や、たとえばアルファベットや0〜9の数値に対応した複数のキーを備える入力装置などで実現される。
 【0017】記憶手段4は、たとえばROM(リードオンリメモリ)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)で実現され、ROMには制御手段2が実行する処理の動作プログラムなどが記憶され、RAMには作成した修繕仕様書、修繕日程計画書、修繕費用計画書、見積書、および工事仕様書などが記憶される。表示手段5は、たとえばCRT(陰極線管)で実現される。印画出力手段6は、たとえば所定の記録用紙に印画するためのサーマルヘッドなどを含んで実現される。作成された修繕仕様書、修繕日程計画書、修繕費用計画書、見積書および工事仕様書は、表示手段5に表示することができるとともに、印画出力手段6から印画出力することもできる。
 【0018】図1のステップs1では、前記入力手段3から劣化診断データが入力されたか否かが判断される。入力された場合にはステップs2に進み、入力されない場合はステップs1で待機する。ステップs2では、入力された劣化診断データに基づいて制御手段2が修繕仕様書を作成する。ステップs3では、前記入力手段3から修繕数量データが入力されたか否かが判断される。入力された場合はステップs4に進み、入力されない場合はステップs3で待機する。ステップs4では、入力された修繕数量データに基づいて、制御手段2が修繕日程計画書および修繕費用計画書を作成する。ステップs5では、前記入力手段3から年度指定データによって所定の年度が指定されたか否かが判断される。指定された場合にはステップs6に進み、指定されない場合にはステップs5で待機する。ステップs6では、指定された年度の修繕日程計画と修繕費用計画と修繕仕様とから制御手段2が見積書を作成する。ステップs7では、指定された年度に行う修繕内容に対応した工事仕様書が制御手段2で作成される。
 【0019】続いて、修繕計画作成装置1が実行する動作を修繕仕様書、修繕日程計画書、修繕費用計画書、見積書ならびに工事仕様書を作成する4つの動作に分割して詳細に説明する。まず、修繕仕様書を作成する動作について説明する。図3は、修繕仕様書を作成する動作を示すフローチャートである。
 【0020】ステップa1では、劣化診断データが入力される。ステップa2では、入力された劣化診断データに基づいて劣化ディグリを求めるために、記憶手段4から評価基準が読出される。ステップa3では、入力された劣化診断データに基づいた劣化ディグリが、読出された評価基準を用いて求められる。
 【0021】なお、前記劣化診断データの入力に先立って、複数の部位から構成される建物に対して、各部位毎に劣化診断が行われる。
 【0022】図4は、劣化診断時に使用され、建物の概要および調査の概要を記入する記入用紙11の一例を示す平面図である。記入用紙11は、建物を識別するために建物毎に予め定められた建物コードが記入される建物コード欄12、建物の名称が記入される建物名称欄13、建物の所在地が記入される所在地欄14、建物の竣工日が記入される竣工日欄15、たとえばマンションなどの集合住宅において戸数が記入される戸数欄16、建物の構造が予め記載されており、該当する項目に所定の記入を行う構造欄17、たとえば設計図を基にして番号付けられた複数の部位の中から、実際に調査した部位の番号がすべて記入される調査個所欄18、たとえば後述するように分類されて番号付けられた複数の調査診断項目の中から、実際に調査診断した項目の番号がすべて記入される調査診断項目欄19、および調査を行った日付が記入される調査日欄20を含んで構成される。
 【0023】前記調査個所欄18には、たとえば建物がマンションである場合に、塔屋、屋上、鉄扉、鉄骨階段および廊下手摺などの部位に付された番号が記入される。前記調査診断項目欄19には、たとえば外装塗仕上げ材、躯体、鉄部塗膜、屋上防水、およびシーリング防水などの調査診断項目に付された番号が記入される。
 【0024】図5は、診断結果を記入する記入用紙21の一例を示す平面図である。これは、外装塗仕上げ材の変退色についての診断結果を記入する記入用紙21であり、当該記入用紙21は、この記入用紙21に記載されている内容が外装塗仕上げ材の変退色についてであることを表す記入が行われる診断項目欄22、たとえばマンションなどの集合住宅において複数の棟がある場合に、棟番号を記入する棟番号欄23、前記調査個所欄18に記入した番号の中から選ばれ、実際に調査した部位の番号を1つだけ記入する調査部位欄24、外装塗仕上げ材の種類毎に番号付けられ、すでに塗布されている既存外装塗仕上げ材の番号が記入される既存外装塗仕上げ材欄25、調査部位欄24に記入された番号で表される部位をさらに細かな部位、たとえば東面、南面、西面、北面などに分割し、当該分割した部位毎に番号付けられた複数の部位の中から、調査した部位の番号を1つずつ記入する部位欄26a〜26d(総称するときには、部位欄26とする)、および部位欄26に記入した部位毎に判断した劣化ディグリが記入される劣化ディグリ欄27a〜27d(総称するときには、劣化ディグリ欄27とする)を含んで構成される。
 【0025】上述の記入用紙21は、外装塗仕上げ材の塗膜表面の色の減退である変退色現象についての記入用紙であるけれども、たとえば紫外線、熱、風雨などによって塗膜表面が粉状になるチョーキング現象や、塵埃、鉄錆、手垢および油脂などの付着、菌類および蘚苔類の繁殖による、簡単な洗浄では除去できない汚れ現象や、前記チョーキング現象の進行によって塗膜厚さが減少してゆく摩耗現象など、様々な劣化現象毎に用意される。
 【0026】外装塗仕上げ材の変退色について、前記劣化ディグリ欄27に記入される劣化ディグリは、次のようにして求められる。まず、調査個所として明るさが均一で、比較的乾燥している表面を選び、新設時の色を劣化が進行していない部分などを参考に推定する。次に、推定色と、調査個所面の色とを相対比較し、「JISL 0804」に記載の変退色用グレースケールを用いて変退色の程度をGスケール値として求める。このGスケール値から劣化ディグリを求め、前記劣化ディグリ欄27に記入する。以下の表1は、劣化ディグリとGスケール値との対応を示す表である。
 【0027】
【表1】
 

 【0028】前記記入用紙11,21に記入された内容は、ステップa1で、入力手段3を実現するたとえば読取手段によって光学的に読取られ、ステップa2およびステップa3の処理が行われるけれども、上述したような外装塗仕上げ材の変退色の場合では、劣化診断時において容易に劣化ディグリが求められるので、診断時に記入用紙21に直接劣化ディグリを記入することができる。したがって、この場合には、修繕計画作成装置1は、ステップa2およびステップa3の処理を行う必要はなく、ステップa1の次にステップa4に進めばよい。なお、劣化診断時において容易に劣化ディグリが求められない場合には、変退色の診断の場合のGスケール値に対応する値が記入される。
 【0029】たとえば外装塗仕上げ材の付着性の場合、次のようにして得られた数値が記入される。まず、調査個所のごみ、埃および油脂などを取除き、所定のアタッチメントを2成分型エポキシ接着剤を用いて接着し、直ちにガムテープなどの接着手段で固定する。次に、前記アタッチメントの周辺にカッターナイフなどで既存塗膜に到達する深さに切り込みを入れ、アタッチメントに衝撃を与えないようにして、たとえば建研式接着試験機を取付ける。さらに、アタッチメントを剥離するまで強制的に引張り、どの部分で剥離したかを確認するとともに、剥離したときの圧力を読取る。この値を前記記入用紙21の劣化ディグリ欄27に相応する欄に記入する。このような記入用紙21に記入された内容は、ステップa1で読取られ、ステップa2で前記圧力と劣化ディグリとの対応関係が読出され、ステップa3で得られた圧力に対する劣化ディグリが算出される。
 【0030】続いて、前記フローチャートのステップa4では、記入用紙21毎に劣化ディグリがまとめて出力される。図6は、記入用紙21毎にまとめられた劣化ディグリの出力の一例を示す平面図である。前記部位欄26に記入された4つのデータとともに、劣化ディグリが最も悪い(高い)代表値が棒グラフ93として出力される。この棒グラフ93は、予め定める基準線91に対して垂直な方向に、劣化ディグリを表す目盛り92が付され、前記基準線91上に各劣化項目の劣化ディグリが等間隔に並べられる。この場合、劣化ディグリが3以上のときに劣化が認められると判断され、すべての方角(東、南、西、北)の面において外装塗仕上げ材の変退色が進行していることがわかる。このような棒グラフ93は、表示手段5に表示させること、あるいは印画出力手段6から印画出力させることが可能である。
 【0031】図7は、前記劣化ディグリの他の出力例であり、外観を重視した場合の出力例を示す平面図である。これは、外装塗仕上げ材に関するものであり、劣化項目毎の劣化ディグリがまとめてレーダチャートグラフ96として表示される。このレーダチャートグラフ96は、予め定める基点94から放射状に劣化ディグリを表す目盛り95が付され、前記基点94を中心とする円周上に各劣化項目の劣化ディグリが等間隔に並べられる。直線L1で結ばれる劣化ディグリは実際の調査結果であり、直線L2で結ばれる劣化ディグリは限界値であり、直線L3で結ばれる劣化ディグリは修繕が不要な安全値である。塗膜内部の歪みによって生じる部分的な破断現象である割れ現象が限界値を超え、また付着性は全く問題がないことがわかる。たとえばL2を超える値が2つ以上ある場合は早急に修繕が必要であると判断され、L3を超える値が2つ以上ある場合は必要に応じて修繕を行えばよいと判断され、これら以外の場合は今後の経過をみて修繕を行えばよいと判断される。
 【0032】図8は、レーダチャートグラフ97として劣化ディグリを出力した例であり、躯体保護性能を重視した場合の出力例を示す平面図である。直線L4で結ばれる劣化ディグリは実際の調査結果であり、直線L5で結ばれる劣化ディグリは限界値であり、直線L6で結ばれる劣化ディグリは修繕が不要の安全値である。図7に示す出力例と同様に、割れ現象は限界値を超えているけれども、その他の項目は直線L6で結ばれる安全値以下の範囲内にあり、現状では修繕が不要であると判断される。このようなレーダチャートグラフ96,97も、前記棒グラフ93と同様に、表示手段5または印画出力手段6から出力することができる。このように劣化ディグリを求め、グラフとして表示することによって、異なる劣化項目を相対的に比較することが可能となる。
 【0033】ステップa5では、総合判定結果表が出力される。図9は、当該ステップa5で出力される総合判定結果表101の一例を示す平面図である。総合判定結果表は、前記劣化項目と劣化度との関係に基づいて推定された建物の劣化状況を示すものであり、たとえば図示される総合判定結果表101は、どの部位についての結果であるかが表示される部位欄102、建物の名称が表示される建物名称欄103、前述したのと同様のレーダチャートグラフ104、劣化度に基づいて選ばれ、依頼者に対して提案される修繕のグレードが一欄表として表示される修繕グレード欄105、該当する部位を構成する材料の特性を表示する材料特性欄106、および該当する部位の劣化ディグリから総合的に推定された劣化状況推定結果が表示される総評欄107を有する。
 【0034】ステップa6では、他の総合判定結果表が出力される。図10は、当該ステップa6で出力される総合判定結果表108の一例を示す平面図である。これは、各部位毎に出力される前記総合判定結果表の内容をまとめたものであり、推定された各部位の劣化状況から建物全体の劣化状況を推定し、どのようなグレードの修繕を行うのが望ましいかを示唆するものである。たとえば、各項目毎に箇条書にして、表示手段5または印画出力手段6から出力される。
 【0035】修繕を依頼する依頼者は、前記総合判定結果表101,108を参考にして、実際に行う修繕のグレードを選択する。このために、たとえばステップa7〜ステップa11では、複数の修繕仕様案が出力される。たとえば超高級仕様、高級仕様、および一般仕様毎に複数の案が提案される。まずステップa7では、下地補修仕様が出力される。下地補修仕様とは新築時の状態に近い躯体表面下地に復旧改修する方法を示すものである。ステップa8では、下地保護調整仕様が出力される。これは上塗りする塗料のグレードに応じた下地膜の仕様を示すものである。ステップa9では、塗装仕様が塗料のグレードに応じて出力される。ステップa10では防水仕様が出力される。ステップa11ではシーリング仕様が出力される。
 【0036】前記ステップa7〜ステップa11で出力される仕様は、グレード毎に予め記憶手段4に記憶されているものである。図11は、ステップa7〜ステップa11で出力される各仕様をまとめた一欄表109を示す平面図である。たとえば図示されるようにして各グレードの仕様が出力される。これらの仕様は表示手段5あるいは印画出力手段6から出力される。依頼者は、前記一覧表109の中から所望とする修繕のグレードを選択する。選択された修繕のグレードに基づいて、後述する修繕日程計画書および修繕費用計画書が作成される。
 【0037】図12は、修繕日程計画書および修繕費用計画書を作成する動作を示すフローチャートである。ステップb1では、修繕数量データが入力される。なお、修繕数量データの入力に先立って、部位の数量、たとえば面積、長さおよび個数などが調査される。
 【0038】図13は、調査時に用いられ、数量を記入する記入用紙31の一例を示す平面図である。記入用紙31は、建物の名称を記入する建物名称欄32、複数の部位の名称が予め記入されている部位欄33、前記部位の数量を表す単位が予め記入されている単位欄34、調査によって各部位の数量が記入される数量欄35、および数量を求めるための計算に用いる計算用余白欄36を含んで構成される。このような記入用紙31に記入した数量が、前記修繕仕様書の場合と同様にして、たとえば入力手段3を実現する読取手段によって光学的に読取られる。
 【0039】ステップb2では、入力された数量が、部位の種類毎に集計される。たとえば複数の棟がある場合、棟毎に調査した数量が、同じ部位の種類毎に集計される。
 【0040】ステップb3では依頼者が選択した修繕のグレードに対応した修繕仕様が読出される。
 【0041】ステップb4では、予め定める期間、たとえば20年間の修繕日程計画書が作成される。これは、依頼者が選択した修繕のグレードに応じた耐用年数を基準として、前記20年間に耐用年数毎に実施される修繕日程計画を示すものであり、修繕数量および修繕仕様を含んだ修繕日程計画書が作成される。
 【0042】ステップb5では、前記20年間における修繕費用計画書が作成される。これは、前記ステップb4で作成された修繕日程計画に基づいて、各年度に実施される延べ修繕数量Bを求め、予め定める修繕単価をCとして、各年度毎に必要な修繕費用A=B・Cを求め、さらに当該修繕費用Aに各年度までに予測される物価上昇率αを加味した予測修繕費用Yを算出し、各年度毎の予測修繕費用Yを合計して20年間の総予測修繕費用Xを算出することによって作成される。
 【0043】たとえば物価上昇率αは、次のようにして加味される。初年度、すなわち修繕日程計画書および修繕費用計画書を作成する年度における修繕単価をC1とし、次年度における修繕単価をC2=C1・(1+α)として、次年度から20年先までに予測される修繕単価をそれぞれ求め、各年度における修繕単価を用いて各年度の修繕費用が求められる。求められた初年度の修繕費用は、前記修繕費用Aであり、また求められた各年度の修繕費用の合計は、前記総予測修繕費用Xである。
 【0044】また、たとえば求めた修繕費用の一の位が2円以下のときには切捨てて、8円以上のときには切上げて、これら以外のときには5円として処理される。なお、前記次年度における修繕単価を求める際に加算される物価上昇率αと、次々年度における修繕単価を求める際に加算される物価上昇率αとを同じ値としてもよく、また異なる値としてもかまわない。他の年度についても同様である。
 【0045】図14は、修繕項目一覧表41の一例を示す平面図である。前記ステップb5の処理を行うことによって、このような一覧表41を出力することが可能である。修繕項目一覧表41は、建物の名称が表示される建物名称欄42、複数の部位の名称が表示される部位欄43、前記部位の仕様が表示される仕様欄44、前回の修繕年度が表示される前回修繕年度欄45、修繕の周期が表示される修繕周期欄46、各部位の数量を表す単位が表示される単位欄47、各部位の数量が表示される数量欄48、修繕単価が表示される単価欄49および部位毎の修繕金額が表示される金額欄50を含んで構成される。
 【0046】図15は、修繕日程計画書および修繕費用計画書51の一例を示す平面図である。修繕日程計画書および修繕費用計画書51は、修繕が行われる年度と、各年度の修繕費と、修繕費の累計とを表すものであり、年度欄52、修繕費欄53、および修繕費累計欄54を有し、また修繕費および修繕費の累計金額が棒グラフとして表されている。棒グラフの各年度の領域56は、累計金額を表しており、この領域56の中の黒塗りで表される領域55は該当する年度に必要な修繕費用を表している。したがって、黒塗りの領域55が表示されていない年度には修繕が行われない。また対応する修繕費欄53は空欄となっている。初年度(ここでは1994年)は、この年に必要な修繕費用と累計費用とは等しくなる。このような計画書51によって、修繕の日程計画および大まかな費用計画が一見して容易に認識できる。この計画書51は表示手段5または印画出力手段6から出力することができる。
 【0047】ステップb6では、前記予測修繕費用Yに基づいて、積立金額が算出される。たとえばマンションの場合、各部屋の持分比率をDとし、1年当たり、かつ1部屋当たりの予測修繕費用Z=Y・Dが算出される。なお前記持分比率Dは、全部屋の占有面積の合計値をD1とし、1部屋の占有面積をD2として、D=D2/D1で求められる。予測修繕費用Zを1年間の月数、すなわち12で除算することによって、1カ月あたりの金額が算出される。
 【0048】ステップb7では、作成した計画書に基づいて収支シミュレーションが行われる。これは、現在の修繕積立保有金額、積立金額(実際に積立てている金額、または作成した計画書で必要となった金額)、および修繕積立保有金不足時において徴収または借入れられる一時金による収入と、各年度に実施される修繕に対する修繕費用および一時金とその利子とに基づく返済金による支出とから行われる。たとえば、積立残高を上回る修繕費用が必要な場合には、不足金額分を一時的に徴収するか、不足分の一部を一時的に徴収し、残りを借入れるか、またはすべてを借入れるかの条件設定が行われる。借入れを行った場合には、借入れ返済金を次の年度の支出額の中に含める。
 【0049】ステップb8では、現状況に基づく収支計画書が出力される。図16は、現状況に基づく収支計画書61の一例を示す平面図である。収支計画書61は、前記修繕日程計画書および修繕費用計画書51と同様の年度欄52、修繕費欄53および修繕費累計欄54を有し、さらに積立金残高欄62を有し、各年度の必要金額の内訳が後述するようにして、棒グラフとして表されている。棒グラフ中の符号63は期首積立保有金額を示し、領域64は修繕費累計金額を表し、領域65は返済金利息金額を表し、領域66は各年度の修繕費を表し、領域67は積立保有金額を表し、領域68は借入返済金額を表し、領域69は一時徴収金額を表し、符号70は積立金、一時徴収金、修繕費用充当金などの累計金額を表している。現行(積立金3100円)では積立残高が13年以後、すなわち2007年以降ずっと赤字になることがわかる。
 【0050】ステップb9では、改訂収支計画書が出力される。図17は、改訂収支計画書71の一例を示す平面図である。改訂収支計画書71は、前記収支計画書61と同様に構成される。図示される例は、積立金を5450円とする案であり、この案によれば、積立金残高は19年後、すなわち2013年に黒字であることがわかる。また、その他の案として除々に積立金額を増額してゆく案なども出力することが可能である。このようにして作成した修繕日程計画書、修繕費用計画書および収支計画書は記憶手段4が備えるRAMに記憶される。
 【0051】図18は、見積書を作成する動作を示すフローチャートである。ステップc1では、入力手段3から所定の年度が指定される。ステップc2では、前記修繕日程計画書および修繕費用計画書の作成時において記憶手段4に記憶された計画書から、指定された年度に実施される修繕に関する数量、仕様および費用が読出される。ステップc3およびステップc4では、前記ステップc1で指定された年度に行われる修繕の数量、仕様、および費用を含む見積書が作成される。この場合、ステップc3では、以下に示すような見積書75が作成され、ステップc4では見積書81が作成される。
 【0052】図19は、見積書75の一例を示す平面図である。見積書75は、工事名称が表示される工事名称欄76、工事部位が表示される名称欄77、各部位に対応した仕様が表示される仕様欄78、部位の数量を表す単位が表示される単位欄79および部位の数量が表示される数量欄80を有する。
 【0053】図20は、見積書81の一例を示す平面図である。この見積書81は前記見積書75と同様の工事名称欄76、名称欄77、仕様欄78、単位欄79、および数量欄80を有するとともに、各部位毎の工事に要する単価が記入される単価欄82と金額が記入される金額欄83とを有する。このような見積書81は、工事の入札時において用いられ、工事の実施を希望する業者が前記単価欄82および金額欄83にそれぞれの金額を記入する。
 【0054】ステップc5では、仕様書作成時において提案した各グレードの仕様での費用比較表が出力される。ステップc6では、工事予算(査定)金額が出力される。ステップc7では、入札業者によって前記見積書81に記入された金額が入力される。この入力は前述した劣化診断データや修繕数量データと同様に、たとえば光学的に読取る読取手段から入力される。ステップc8では、入札業者の比較表が出力される。
 【0055】図21は、工事仕様書を作成する動作を示すフローチャートである。ステップd1では、入力手段3から所定の年度が指定される。ステップd2では、仕様コードが付されて記憶手段4に予め記憶された複数の工事明細が読出される。工事明細とは、たとえば塗料の材料、メーカー、商品名、塗布手順、塗布方法および条件などの具体的な内容を示すものである。ステップd3では、工事の概要、たとえば場所、依頼者名、竣工年月および工事期間などが入力される。ステップd4では、前記修繕日程計画書および修繕費用計画書の作成時において記憶手段4に記憶された計画書から、指定された年度に実施される修繕に関する修繕仕様が読出される。ステップd5では、読出した修繕仕様に基づいて、指定された年度に実施される修繕に対する工事仕様書が作成される。たとえば、以下に示すような工事手順を複数の工程に分割して示す工事仕様書85〜88が作成される。
 【0056】図22は、工事仕様書85を示す平面図である。工事仕様書85は、下地補修工事を複数の工程e1〜e10に分割してフローチャートとして示すものである。各工程を示すブロック内には、実施する工事内容を簡潔に表す工事名が記載される。また、その工事の仕様が仕様コードで記載される。たとえば「クラック浮き処理等」と記載された工程e3では、仕様コード「30−60」で記憶される工事が実施される。
 【0057】図23は、工事仕様書86を示す平面図である。工事仕様書86は、前記工事仕様書85の工程e5であるクラック標準処理方法を複数の工程f1〜f12に分割してフローチャートとして示すものである。各工程を示すブロック内には、前記工事仕様書85と同様に、実施する工事内容を簡潔に表す工事名が記載される。また、工事仕様書86には、対応した仕様コードが記載される。
 【0058】図24は、工事仕様書87を示す平面図である。工事仕様書87は、前記工事仕様書86の工程f2〜f5,f10,f11の流れ、工程f6〜f8,f10,f11の流れ、および工程f9,f11の流れで行う工事の方法を示す図形を含む。たとえば、「亀裂1mm以上」のときに行われる工事、すなわちエポキシ樹脂の注入(工程f3)、Uカット処理(工程f4)、プライマ塗布(工程f5)、コーキング(工程f10)およびフィラー処理(工程f11)が段階的に図示される。
 【0059】図25は、工事仕様書88を示す平面図である。工事仕様書88は、下地補強保護調整工事を3つの工程に分割して、すなわち素地調整、下地補強、下地保護調整の3つの工程に分割して、各工程における工事条件を示す一欄表を含む。当該一欄表には、各工程において用いられる塗料名、塗装の回数、標準塗布量、塗り重ね時の乾燥時間、希釈剤、希釈率および塗装方法などが記載される。また工事仕様書88には、工事名称、工事仕様、仕様コードなどが記載される。
 【0060】以上のように本実施例によれば、いつごろどのような修繕が必要となるかがわかり、またそのための費用も明らかとなる。また、1年間に必要な1部屋当たりの修繕費用が明らかとなる。さらに、収支計画書61,71によって、現行の積立金額が妥当であるかどうかが判断できる。したがって、繰返し行われる修繕のための最良の積立金額を容易に設定することができるとともに、現行の積立金額では不充分であり、積立金額の増額を行おうとしたときに、使用者が納得するような論理的な説明を行うことができる。このような説明は、表示手段5または印画出力手段6からの出力結果を利用して行われる。
 【0061】なお、マンションなどの集合住宅でない場合であっても、1年間に必要な修繕費用が明確となるので、依頼者は修繕のための費用計画を容易に立てることができる。
 【0062】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、長期間における修繕の日程および費用計画によって、いつ頃どのような修繕が必要となるかが、またそのための費用が明確化される。費用計画は物価上昇率αを加味したものであり、信頼性の高いものである。したがって、修繕の依頼者は、そのための費用計画を容易に立てることができ、必要な費用の準備を確実に行うことができる。また、見積を工事入札時などに用いることができる。さらに、施工仕様によって工事内容が具体的に把握できる。
 【0063】また、収支計画によって費用計画をより具体的に把握することができる。たとえば年間または月々いくらずつ積立てればよいかがわかるので、長期にわたって繰返し行われる修繕を赤字とならないように、または一時的に不足となる金額を徴収しないように行うことができる。またこのデータは積立金額を増額しようとする際に有効に利用される。
 【0064】また、建築物が集合住宅などであったときには、1年間に必要な1使用者当たりの修繕費用が明らかとなる。したがって、各使用者毎に費用計画を立てることができる。
 【0065】また、劣化項目と劣化度との関係が棒グラフやレーダチャートグラフとして出力されるので、建築物の劣化状況を目視で容易に確認することができる。このようなグラフとして出力することによって、各部位に対する複数の劣化項目の相対比較を容易に行うことができる。
 【0066】また、費用計画が棒グラフとして出力されるので、建築物の長期にわたる修繕に関する計画を目視で容易に知ることができる。
 【0067】また、施工仕様の施工手順は、複数の工程に分割して、たとえばフローチャートとして、施工方法を示す図形を含んで、あるいは施工条件を示す表を含んで出力されるので、施工仕様を目視によって容易に知ることができる。